酷い雨。
バイトまで空いていたので時間稼ぎ。
久方ぶりに大学の映像資料鑑賞施設を利用し、
アルトマンの『ロング・グッドバイ』鑑賞。
原作者チャンドラーの探偵マーロウとはだいぶ違
うらしいのだが、エリオット・グールドのそれは
非常にイカした野郎だった。
舞台はアメリカ。
いきなりカメラが猫をとらえて、その猫がシブい
男を起こす。そして彼は眠い目をこすりながら猫
のキャットフードを買いに深夜の街に出かける。
この瞬間にただの映画ではないということがよく
分かるのだが、カメラが常に動いているのも相ま
って、どこか夢遊体験のような感覚。
翌朝目を覚まして外に出ると、斜向かいのバルコ
ニーではヒッピー女集団がくねくねダンスを踊っ
ている。街並みにはだる〜い空気が漂っている。
マーロウは冗談を用いてそういった空気を翻し
て、やがて自身も巻き込む事件に携わっていく。
このあたり、あくまでマーロウが"傍観者"でしか
ないのが非常に秀逸。
誰かのために全力で解決を目指す探偵の形がある
のなら、荒廃しきった時代の人間の様子を呆れな
がら眺める探偵がいてもいい。
ただ最後はいつの間にか見ていた夢から起こされ
るように、あまりにも唐突な幕引き。