イクスピアリにて

ディズニー帰りの人たちの流れに逆らって自転車

を押していくのはなんか惨めだったけど

とにかくイクスピアリで映画を観るというロマン

のために僕は進み続けるのだ

レイトショーということもあってもう客はほぼい

なかったんだけど、変なおばさんと同じ列でちょ

っと気まずかった

今回はアカデミー賞候補にも選ばれた

『パストライブス/再会』という韓国の映画を観た

日本映画のアイデンティティを確立させるために

お隣の今をときめく韓国映画は避けてきたのだが

なんとなくレイトショーにピッタリな雰囲気を感

じたので鑑賞する

 

まあ感想としてはそんなに面白くなかった

というか、初恋の男女が未練タラタラな感じが一

定の女性にはウケるんだろうけど、僕にはそこま

でハマらなかった

そこは別にいいんだけど、映画の中で恋愛は描か

れているのに生活があまり描かれていないような

気がして、そこが気がかりだった

舞浜へ

昨日の続き

このまま家に帰るのもつまらないので

家から30分くらいのところにあるイクスピアリ

で行ってみることにした

ずっと真っ直ぐいって葛西駅を突っ切って

ようやく曲がるあたりはもう東京湾の真ん前で

潮の匂いがした

春だから霞立っていて、すごくサイクリング日和

イクスピアリまで行く道が湾岸道路のせいでぐち

ゃぐちゃでよく分からなくて苦戦した

し、なんかこの辺の雰囲気が怖かった

夜の橋の静けさにはなんとなく幽霊が出そうな気

配を感じてしまう

江戸川橋を渡ればもうディズニーのある舞浜なん

だけど、キラキラ光った夢の国が近いだけに、そ

のすぐ近くに街灯もないような川辺のコンクリー

ト道があるっていうのが怖かった

 

自転車を買った

ようやく自転車を買った

元々ヴァクセンの折りたたみ自転車を使っていた

んだけど、大学の駐輪場に置きっぱなしにしてい

たらそのまま回収されてしまった

防犯登録してなかった僕が悪いんだけど

もう絶対に物の管理を杜撰にしたくないという教

訓だけ与えて、館林や川越を孤独な高校生と共に

走ってくれた自転車はいなくなってしまった

 

そんな無慈悲な喪失を経て2号車を買う訳だが

今回は別に輪行するつもりはないので

店でいちばん安い折りたたみじゃない自転車を買

うことにした

実際店員からはもっと高い自転車を買えよってオ

ーラをビンビンに感じたけどお構い無しで購入

思ってたよりずっと乗りやすくて安心した

さっそく自転車を買った清澄白河から自宅までサ

イクリングしてみる

世田谷あたりの東京の夜景とはちょっと違う

僕の遠い昔の夢に出てきた景色のような

どこか不安げで、でも心地よい感じ

もし僕が小さい頃に見た夢が予知夢で、今僕がそ

の夢に近いところを走っているのだとしたら...な

んて空想が湧いてきた

迷い込んだ路地のこの団地がすごく懐かしい

f:id:kzombie:20240408221200j:image

僕の夢なのか前世なのか分からないけど

この建物のどこかの部屋にいるアンティークを集

めている変な住人にずっと前にお世話になったよ

うな気がする

そんな冗談は置いておくとして

これが予感なのか、それともただの高揚感なのか

は分からないけど、とにかくすごい心がウキウキ

した

オリエンテーション

大学のオリエンテーションが終わった

ふだん大人としか喋らないなかで久々に同学年と

喋ると、会話のリズムが全然違うことに気づく

一般道と首都高くらい違う

会話は別に嫌いじゃないしむしろ好きだ

だけどなぜか会話が面倒だなって思うこの感覚に

すごく大学を感じる

帰りは友達と秋葉原あたりまでぶらぶら歩いた

僕に興味を持ってついてきてくれるのもいるらし

く、僕ばっかり喋ってるのもアレだななんて思い

つつ、それなりに会話を盛り上げている

いろんな人がいて、ものがあって

そこで取捨選択の判断は委ねられている

それが大学なような気がする

 

バルカン超特急

ヒッチコックの『バルカン超特急』というむかー

しの映画を鑑賞f:id:kzombie:20240405140649j:image

ロンドンに向かう国際電車が東欧の田舎駅で雪崩に遭い立ち往生、乗客が泊まった小さなホテルでコミカルな人物紹介ののち、翌朝動き出す電車で事件が起きる。電車の中で出会ったフロイというおばあちゃんが忽然と姿を消してしまうのだ。アメリカの富豪の娘である主人公のアイリスは前夜に夜な夜なクラリネットを吹く変人のギルバートに協力してもらうが、『そんな女性はそもそも乗っていなかった』との証言ばかり。実はその裏では、大きな策謀が渦巻いていた...。

というお話

ヒッチコックは『鳥』ぶりの鑑賞だけど

深層心理の不安を突かれるような展開はこの作品

も同じだった

雪崩で仕方なく立ち往生となった人物の憂鬱を感

じさせる会話劇(ここだけでなんと約30分!)

その翌日、今度は汽笛や車輪の音が焦燥感を演出

する密室劇

やがて終盤で銃撃戦が展開されるんだけどそこの

シームレスさがお見事

この映画最大のポイントは

ヒロインに優しくしてくれた一人の老婆

その老婆が消えたこの映画最大の謎の種明かしと

して、実は彼女はイギリスの諜報員で、医師のハ

ーツが列車の乗客を買収して彼女を拉致しようと

していた...というオチから銃撃戦にすんなり入っ

ていくのが面白い

ただ、この映画は深刻なサスペンスじゃなくて、

時折アイリスとギルバートの会話やほかのキャラ

クターのやり取りにユーモラスな空気が充満して

いて、これは『鳥』のときもそうだったけど、た

だの「サスペンス」「ホラー」にしない部分にこそ、

ヒッチコックの味があるんだと思う

エンターテイナーは別に希望の夢を見させる人だ

けじゃなくて、悪夢を見させるのに特化した人だ

っているし、その最果てにいるのがヒッチコック

ということになる気がする

残念なニュース

店長がもうすぐ異動になってしまう

という話を聞いた

僕がこっちに来てからおそらく一番面倒を

見てくれた東京の人なんじゃないかな

書店で働いてから精神が結構成長したと思ったり

するので感謝の気持ちでいっぱいだ

どこか変わってる人だったけど

でも右も左も分からない頃からずっと優しくて

たくさんサッカーや映画の話もしてくれて

本当に嬉しかったなあ

いつかこの感謝の気持ちを言葉じゃなくて

行動で返せるようにがんばりたいなと思う

誰も知らない名前

天気もぽかぽかになってきて

いよいよ新学期のはじまり

f:id:kzombie:20240402162403j:image

今月最初の一本は『千と千尋の神隠し

改めて観るといろんな発見がある

ストーリーはもちろんなんだけど

キャラクターの動かし方からもうすでに面白い

泣いている千尋が目を擦る動作とか

焦って坊を探す湯婆婆の動作

そのひとつひとつに命が宿っている

まさに"アニメーション"

やっぱり凄いな