2023-11-30

11月は『悪魔の手毬唄』をプレゼンしたり、

世界史をもう一度学び始めたりと、

引越し関連で忙しい中でも、

そこそこチャレンジできた1ヶ月だった。

そんな今月の〆に『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。f:id:kzombie:20231201162455j:image

X(旧Twitter)で横溝テイストで面白いと評判だった

ので前々から気になってはいたものの、自分が鬼

太郎未視聴なのもあってなかなか食指が動かない

でいたのだけれど、『悪魔の手毬唄』の研究をし

たりなにかと横溝正史にお世話になった1ヶ月だ

ったのでバルト9に観に行くことにした。

講義が終わってから急いで銀行からお金を引き出

して新宿行の電車に乗って、20時45分の上映にギ

リギリ間に合うというドタバタ感。

今月の忙しさを象徴するその感覚を融解してしま

うような昭和浪漫の微熱をしっとりと感じられる

素晴らしいアニメーションだった。

職場の鬼太郎ファンの先輩が『犬神家の一族』に

近いところがあると言っていたが、古びたトンネ

ルの向こうにあるのはまさに因習村で、八つ墓村

や獄門島を想起させられた。背広や紋付袴を来た

人間が畳の上に鎮座して列を成す姿と、遺産相続

のいざこざはもはやそのまんま犬神家。

水木という巻き込まれ役とゲゲ郎(後の目玉おや

じ)にバディを組ませて、どのようなフーダニット

が展開されるのかと思いきや、まさかの福田村事

件を寓話化しまような閉鎖集落の闇に京極夏彦

魍魎の匣』に影響を受けたような禍々しさが混

ぜこまれたシナリオで、そこに東映アニメーショ

ンらしいバトル展開も。

期待していた市川崑のような愛憎取り巻く日本ミ

ステリー要素はそこまで強くなかったものの、

この時代にここまで見事なおどろおどろしやアニ

メーションが見ることができた事実に興奮した。

作画に関して言えば、

日本家屋の陰翳や苔生す森の描写は日本アニメ史

に遺るクオリティと言っても過言じゃない。

実写ではもう不可能な昭和日本映画の再現の可能

性を見ることが出来た。

なんといっても水木(原作者とは別人)という主人

公が昭和映画の主人公のハートを持っていてカッ

コよかった。

戦後に金や権威に溺れた人間を描くことで、そう

いう他人の犠牲の上で成り立つ虚栄に目が眩まさ

れないようにというメッセージも伝わってきた

し、あえて現代に昭和の人間たちを描くことで、

そしてその当時の少年に未来を語らせることでど

っか内省的に見ることが出来る構成になっている

のも凄くいい脚本だと思った。

村から出たことないサヨという娘がコテコテのキ

ャラ設定が懐かしくて、アニメの世界に昭和の実

写が帰ってきたようなノスタルジーを感じて哀し

くなったし、どうか水木と結ばれてほしいと思っ

たんだけど予想以上に胸糞悪い展開にゲンナリ