とことん淡いね

先日岩井俊二の映画を「学びがない」とぶった斬り

してしまった金沢だが、恥を忍んで撤回する

『Love letter』

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学びのある、素晴らしい映画だった

僕は今の鑑賞スタイルを確立させるずっと前に新

海誠の『秒速5センチメートル』に出会ってお

り、あの淡い青春の影を追って現実が崩壊したと

いってもいいくらいである

その映画が明らかに影響を受けたと分かるのが、

この『Love letter』の映像

これは実際に新海誠がはっきり公言しているから

間違いない

僕が80年代のアイドルとして認識していた中山美

穂が、役者としての全盛期を迎えている頃の作品

だと思うけど、この人の一人二役でペンフレンド

の交際が始まっていく形

僕は最初一人二役であることに気づかなかった

そのくらい演出や衣装を差別化しているという意

味では、女優の一人二役映画の中では珠玉の作品

なのではないだろうか

実はこの映画の現実パートに面白味はあまり感じ

なくて、かわりに高校生の過去回想があまりにも

素晴らしいのである

そういや秒速も現実パートは酷いほど現実を叩き

つける内容となっており、ライブで歌わないで有

名な山崎まさよしの名曲が無ければお通夜だった

だからまあ、あえてそうしてるんだろうきっと

これは全作通して言えるのだけれど

岩井俊二の映画に出てくる女性はそこまでタイプ

じゃなくても美しく感じる

あのCHARACHARAとして確立させた人間だか

らまあ、それほど女性に対する感覚が研ぎ澄まさ

れているのだろう

元々岩井俊二は僕が敬愛する市川崑に影響を受け

ており、とくに女優に対する光の当て方はもうモ

ロに受けてるなっていうのがわかる

女優の撮り方が本当に上手なんだと思う

かわりに脚本が微妙

今回も吹雪の中おじいちゃんが藤井樹を背負って

走ろう!とか言い出したあたりは本当に困惑した

そして最後の渾身の叫びも

そういう演出なのか

なんでかちょっと笑ってしまった

まあでもそれが味なのだろうな

この人の作品は

あまり深入りしないくらいがいいんだろうし

イェンタウンのぶっ壊れ言語がそれを物語ってる

でも断片的にめっちゃいいシーンが来るから

油断出来ないのである

スワロウテイルのフェイホンが走るシーンとか良

かったわね

最後の図書館カードの裏に描かれた肖像も

もう少しあれにまつわるエピソードが欲しかった

あのときの亡き藤井くんに対する感情は

樹だけの秘密なのだろうけど

それでも僕らはその秘密を知れてしまう特別感が

映画の醍醐味であるから

最後くらいは藤井くんに心を盗んで欲しかったな

故人ゆえに

一先ず分かったのは

この人の思春期少女の撮り方が本当に上手

あと不思議と演出も子どもを撮ってるときの方が

冴えているような気がする

参考にしたい

藤井樹の図書館カードを使ったアプローチに

ジブリチックな既視感を覚えてしまったのだが

なんとあの『耳をすませば』も『Love letter』と

同じ1995年公開の映画らしく

この頃の恋愛のメッカは図書館だったのかもしれ

ないと思い、僕の高校時代の図書委員の女の子へ

のアプローチは20年早ければ実っていたのかもし

れないと、とても虚しくなった