寅さん

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「さくらぁ...!」

令和が失ってしまった大切なものをぎゅっと凝縮

したような響きで3月の映画をスタートさせる

寅さんの何がそんなに心を震わせるのだろうか

今年は『男はつらいよ』55周年のメモリアルであ

り、卒寿を超えた山田洋次監督のコメントを見た

ときにふと寅さんにもう一度逢いたくなった

オードリー・ヘップバーンが銀幕の妖精であるな

らば、渥美清は銀幕の夕焼けだな

渥美清の演技は本物の情がこもっているけれど

今日もとちっちまったなぁ...と川に石ころを投げ

るような切ない人物像も感じられる

人の心をポカポカと暖める茜色と

もう少しで暗闇を迎えるもの悲しさ

まさに夕陽のような人間だなあと再確認

改めて渥美清人間性をよく捉えているなあと思

うのは『男はつらいよ』の主題歌

メロディも叙情的でいいんだけど

 

奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の

今日も涙の 日が落ちる 日が落ちる

 

こんなみっともなくて切ないフレーズを

僕が好きにならないわけがない

 

寅さんは本当に"情けない"のかと考えたとき

たしかに風情はまっったくないのかもしれない

だけど人情は誰よりもある

どっちもとると欲張りで性悪だから、まっすぐ生

きる方を選んでるってだけ

3月の夕日は心地よく見られそうである