仙台から帰る夜行バスが思っていたのと違って
カーテン仕切も無いただの高速バスだった
しかも隣はおばちゃんだったから
なんか心理的に窮屈だった
でも若い男女が結構多くてびっくりした
私立のぬるま湯に浸かってる好青年やハイカラ女
子とばかり触れ合ってきて麻痺してたけど
若者の相場は実際のところ
100km移動するのにこうやって苦労してる人がほ
とんどなんだなあ...と考えさせられた
前回は窓のカーテンにくるまって映画を観たんだ
けど、今回は通路側でそれすらも封じられた
まあ諸々のストレスを睡眠というワープ機能では
ぐらかすのが夜行バスという乗り物だと思うから
しっかり寝ることにした
そして休憩場所で中途半端に起こされる不快感を
また寝てはぐらかした
朝5時に目を覚ますと東京に着いていた
眠い目をこすりながら歩く東京駅は
もちろんすっからかんで
ただ
早朝の地下鉄の空気って独特でなんだか浮つく
1日歯磨きできなかった罪悪感と不快感を
17のチョコミントで誤魔化した(笑)
帰って今度こそ歯磨いて風呂入ってソッコー寝た
早起きして深い二度寝をするという背徳感は
大学生のうちにたっぷり堪能しておこうと思う
旅行の余韻なんてこの二度寝でもう死んだ
次の覚醒からはまた傷つきながら生きる世界だ
柄でもなくグロ系ホラーの『CUBE』という映画
を観たり、『のび太の宇宙開拓史』に心躍ったり
した1日の締めくくりは井上vsルイス・ネリだ
結果はやはり井上の勝利だったけれど
1Rで井上がリングに臥す光景はあまりにも衝撃的
だった
だけど井上の一見軽そうな右フックがネリをリン
グ角に吹っ飛ばしてしならせる光景がもっと衝撃
だったな
ほんと凄い試合
ネリは僕がボクシングに目覚める前から知ってる
当時の日本ボクシング界の希望だった神の左・山
中慎介がこの悪童にTKOされる姿は小学生の目に
しっかり焼き付けられたし、そのあとのリベンジ
マッチでこいつが体重超過して、明らかに山中に
追い風かと思いきやまたネリが勝つという胸糞の
悪い一連の流れはハッキリ記憶していた
だからこそ今の日本を背負うに相応しい、いや相
応しすぎるモンスターがネリを吹っ飛ばす光景を
ずっと見たくて仕方がなかったのだけれど
規定体重を逆に大きく下回ってきたり
フェイスオフのときのポーカーフェイスだったり
今回ネリという存在になんか怖いオーラがあった
もしかしたらこいつに喰われるかもしれない、、
そんな吸引力のある顔つきをしていた
それをふまえての1Rは、タイソンが世紀の番狂わ
せに沈んだとき以来の東京ドーム興行というジン
クスもよぎって、本当にゾッとした
しかしそれをいつの間にかエンターテイメントに
変えてしまう井上尚弥の胆力がヤバすぎた
孫悟空やジャッキーチェンなんかもそうだけど
心技体が究極に達するとおそらくエンターテイナ
ーになるのかもしれない
自分のダウンを"サプライズ"と語ってしまう精神
は本当に頭がおかしい
ただ間違いなく事実としてあるのは
井上は強かったし、ネリも凄かったということ
ボクシングという競技は本当によくて
あそこまで平等性の保たれたスポーツはほかにな
いと思う
それはたとえ体重超過やドーピングをかつてやら
かしてしまったネリにもあてはまる
どんなに良い奴でも、逆にどんなに悪い奴でも
結局リングの上で平等
結局やるかやられるかでしかない
だからこそ井上もネリもどちらもかっこいい
今回のネリに至っては進撃の巨人のライナーのこ
の台詞に完全に重なっていた
なんかこの頃平等だ！平等だ！と
世間がうるさいけれど
僕は真の平等はボクシングにあると思う
ボクシングを見もしないで平等を偉そうに語るな
んじゃないよ
ルイス・ネリという存在は大前提クズで憎くて
でも今回リングの上でしっかり自律してきたとこ
ろの怖さと、実際にドネアすら出来なかったこと
を成し遂げた凄さがあって、それでもやっぱりム
カつくようなところがあって、井上のフックで吹
っ飛ばされたところは最高だった
そういういろんな感情のごった返しを経て、その
人を愛せるとき、それが平等だと僕は思うんだよ
そんな会ったこともない初対面の弱者に
私とあなたの価値は平等なんです！とか押付けら
れてもこっちとしては知ったこっちゃないんだし
その人のいい所も悪いところもすべて吟味した上
で愛することが真の平等だと僕は思う
それを学べるのがボクシングという崇高なスポー
ツ、言い換えれば至高のエンターテイメント
