2023-11-13

テルマ&ルイーズ』という映画を観た。

巨匠リドリー・スコットの映画だが、僕は彼のと

にかくスケールのデカい映画を先に2本観ていた

ので、まあ広大なアメリカを縦断する内容の時点

でスケールが大きいことには変わりないのだけれ

ど、マキシマスの雄叫びは聞こえてこないし、間

断なき酸性雨も降ってない。

主役はなんの能力も持たない女性2人。テルマ

ルイーズがある日パートナーを置き去りにして燃

費の悪そうな車に乗って旅行に出かけるのだが、

テルマのワガママで行ったナイトクラブで、彼女

が男に強姦されそうになってしまうところをルイ

ーズが銃で撃ち殺し、長い逃避行が始まる。

1969年のイージー・ライダーは、最近入り浸って

いるXのアイコンにするくらい自分に影響を与え

た作品なのだけれど、自由が欲しくて、でも進め

ば進むほどその自由とは遠ざかり、むしろ行く手

を阻まれてしまう。いつか来る終わりのために今

を全力で楽しむ。

そういう流れがテルマ&ルイーズにもあった。

リドリー・スコットは壮大な物語をベタに演出す

る人だということを先の2本で感じていたんだけ

ど、まさにこの作品はその色がくっきり現れたよ

うなものだった。

元々弱い立場にいた2人がそれを吹っ切るために

そうならざるを得なかった物語ともとれるし、

でも人を殺してしまった時点でバッドエンドは確

定されたようなものである。

判断基準をこちら側に任せるやり方にアメリ

ン・ニューシネマの残り香を感じた。

ジーナ・デイヴィス演じるテルマの無邪気さが心

に残るし、一方で少し上の立場から落ち着いて行

動するルイーズが印象的なのだけれど、ただの旅

行になるはずだった日々を逃避行に変えてしまっ

た方はルイーズっていうのが面白い。

マイケル・マドセン演じるルイーズのパートナー

であるジミーが本当に不憫で、だけれども男らし

く大きな器でどしっと構える姿がかっこいい。

一方で超若いブラピも出てきて、まったく頼りな

い男と早いうちに結婚してしまい、まだオボコな

テルマをいとも簡単に落としてしまう。

女の視点からいろんな男の在り方が筒抜けになっ

ていて、そのほとんどがろくでもないのが面白か

った。

 

極めつけはこのラストシーン。

ビッグに引き続き車の中でのワンシーンに僕は心

を奪われた。

終わりが近づいていることを徐々に察した2人。

実際にたくさんの警察がテルマとルイーズを包囲

する。目の前は崖で、四面楚歌。

もうあとは捕まってしまうだけなのだけれど、2

人の表情は長い雨がようやく止んだときのように

清々しい。ここのアップの表情と、奈落を超えて

いこうとアクセルを踏んだときの2人の最後の握

手をクローズアップでギューンと映すのがすごく

リドリー・スコットらしいベタでエモーショナル

な演出だった。

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