2023-11-09

新居の件がようやくひと段落したので、1週間ぶ

りに落ち着いた心構えで映画を観る。

今回はトム・ハンクス主演の『ビッグ』を視聴。

コメディ作品はインプットが少ないからあまり観

ないんだけど、この作品はコメディ要素ももちろ

んあるけど人間ドラマが素敵で、人気な理由も頷

ける内容だった。

それもそのはず監督はペニー・マーシャル

あの『レナードの朝』を撮った名女性監督だ。

女性はどうしても近視眼的になっちゃうから映画

を撮るのには向いていないように思えるけど、こ

の人の映画は魔法みたいなストーリーを描くのが

凄く上手くて、やっぱりそんな区別的な見方をし

ちゃいけないよなと思う。

トム・ハンクス出世作と言われるだけあって、

イキイキしたハンクスに終始幸せを貰った。

こういう見終わった後に幸せになれる作品は本当

に素敵だと思う。

ひょんなことから体が大人になってしまった小学

生が、おもちゃ会社に勤務することになって、そ

こで独創的なアイデアを見初められて、やがて秘

書の女性との恋も経験して、心も成長していく物

語。って書くのはナンセンスかもしれない。

だってこの作品は大人になっても子供ならではの

感性を忘れないことが大切だよっていうメッセー

ジをコメディ調にして与え続けているから。

だからトム・ハンクスが主人公であることには変

わりないんだけど、主人公の成長譚というよりは

むしろ主人公に感化される大人たちの心情変化を

楽しむ作品。

僕がトトロの本当の面白さに出会ったあの季節に

思っていたことがそのまんま映画のテーマになっ

ていたことに感動を覚えた。

たとえばマクミラン社長とのワンシーンで、おも

ちゃ屋に視察に来ていた社長がある日ジョッシュ

が無邪気におもちゃを手に持って駆け回っている

ところに遭遇し、実は社長も子供心をもっている

ので意気投合するシーンは本当に心が温まった。

ああ、このスタンスだよなあと。

やっぱり大人になってもある程度子供らしさを心

の内側で大切に握りしめておくべきだと思う。

そうしないと考え方が凝り固まった訳の分からな

い人間になってしまうから。

この作品に登場する社長の腰巾着がまさに悪い見

本で、でも彼にもどこか子供らしさを感じられる

のがまたこの作品のメッセージだと思う。

f:id:kzombie:20231109180527j:image

そしてなんといっても、スーザンとの恋愛。

本当に感動した。

最初は腰巾着のフィアンセとしてちょっとイヤな

大人の立ち位置で登場するんだけど、ある日ダン

スパーティーで他の男とは違う感覚で生きてるジ

ョッシュのことが気にかけて、子供らしく(現に心

は子供であるから)純朴なジョッシュの家に招かれ

ると、あれやこれや経験豊富なキャリアウーマン

という彼女の一面が実は彼女自身を苦しめていた

ことにジョッシュの子供心満載の部屋で気づく。

どんなに荒んだ女性の心にも魔法使いを夢見てい

た昨日があって、その感覚を引っ張り出してあげ

るジョッシュと、そんな感覚も良いかもなと笑み

を浮かべるスーザンの表情が印象的だった。

しかしジョッシュは子供に戻りたくなってしま

う。そりゃまだ子供で大事な家族や友人がいる。

始まりがあれば終わりがある。

最後、車でジョッシュの家まで送るスーザンに感

情移入してしまい、苦しかった。

だって昨日まで恋人だと思っていた男の人が、恋

をしてはいけない男の子だったと思うと、気づか

ずに大人の世界を教えてしまった後悔もあると思

うし、子供心を思い出させてくれる彼と別れなき

ゃいけない悲しさもあると思う。

そんないろんな感情をグッとこらえて、最後ジョ

ッシュにキスをする。このときのキスが口づけじ

ゃなくて額にっていうところに本当に感動した。

もうこの瞬間のスーザンは恋人でもなんでもなく

て、一人の大人の女性。それも本当の大人。

子どもを本来あるべき場所に送ってあげる、真っ

当な人間。

最初の頃にイヤな大人として登場するヒロインが

最終的に本当の大人の女性に成長して去っていく

切なさと美しさ。

f:id:kzombie:20231109182254j:image

人は大人であろうとすればするほど子供っぽくな

ってしまう。

人として忘れちゃいけない要素の中にきっと子供

らしさっていうのもあって、それを忘れないでい

ればどこか大人に見えてくる。

僕はやっぱり宮崎駿にそれを感じる。

そんな素敵なテーマが込められた映画だった。