講義終わりに六本木へ。
こんな大人の街になんの用があるのかというと、
トーキングブルース『現代の信仰』。
古舘伊知郎をついに拝むことができる日が来た。
僕の語彙の先生。
もちろん文学と映画に学んだものが多いのかもし
れないけれど、当意即妙の部分は完全にこの人に
影響を受けた。
仰"を捉え、静と動の絶妙な話術、ユーモアとその
年輪でもって2時間半一切絶やす事なくテーマを
繋げてゆく姿に感動。
僕自身文学賞をとり、どうして自分が賞をとれた
のかを探す旅に出てそこで民俗学に出会い、実際
に"信仰"の現場に出向いて、その素晴らしさを肌
感覚で味わい、それが映画体験に活きるんだな。
スタジオジブリを中心に、映画で描かれる"信
仰"に日本人のアイデンティティを享受し、映画体
験の大切さを学ぶ上半期から、社会問題を透徹な
眼差しで見つめるようになった下半期。
"信仰"を意識し今回の話題である"現代の信仰"と
向き合った1年の最高の総決算だった。
二階席の一番上に座ることになって、最も高い所
から古舘さんを見下ろす事になったのだけれど、
今まさに数百の自我の壁に向かって今日まで69年
膨らませ続けた己の自我をたった一つ、水も飲ま
ずに闘わせ続ける人間のそのスピリットと舞台袖
にはけていく背中は完全に刻まれた。
約2時間ぶっ通しの饒舌が僅かに鈍ってきて流石
に人間の限界かと思った瞬間、僕の耳には
SASUKEで馴染んだあの実況が始まる瞬間の高
揚。キレが戻るとかじゃなくて、声色そのものの
ギアが変わるような感覚が凄かった。10代残り僅
かにして憧れの人の生実況が聞けたこと、本当に
素晴らしい一夜だった。