七人の侍

二十代になって最初に観る映画

タイタニックはまだ恋をしてないうちに観るもの

では無いと思うし、ジブリの気分でもなかった

僕が将来どういう人間になりたいかを考えたとき

に、まさにその内容やそれを撮った監督が指標と

なるような作品を観たかった

七人の侍

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ついに日本映画の教科書と向き合うとなって

凄くワクワクした

3時間なんてあっという間だった

それはあっという間だと感じさせるように

黒澤明が工夫しているからだ

それでこそ映画であり、それでこそ不朽

 

僕がお見事!と思ったのは勘兵衛と七郎次の会話

勘兵衛「フム、そのとき、どんな気持ちだった?」
七郎次「別に・・・」
勘兵衛「もう合戦はいやか?」
七郎次「・・・」
勘兵衛「実はな、金にも出世にもならぬ難しい戦があるのだが、ついて来るか?」
七郎次「はい」
勘兵衛「今度こそ死ぬかもしれんぞ」
七郎次、静かに笑う

このシーンは脚本もカットも演技もアッパレだな

ああ、これが侍だよなあと思ったその瞬間、

何故か感極まってしまった

僕みたいな人間をここで唸らせるのを

監督は70年前の感覚で狙ってやってるっていうの

だから本当にすごい人だったのだと思う

 

侍の喋り方もそのへんの時代劇みたいに仰々しい

感じではなく、いたって現代と変わらない

侍に武士語を喋らせていかつい感じを出させるよ

りも、現代人と何ら変わらない言葉遣いの中にど

ことなくちらつく武士の品格っていう黒澤のやり

方がよっぽど侍を真っ芯で捉えてるように思う

久蔵に関しては

べつにクールな人物像としてそこに立っている訳

でもないのに、そう思わせてしまう魅力がある

 "クール"という言葉の模範解答がそこにあった

『どこに?』に対する『山。』の言い方とか、

種子島持ち帰ってきたときの『二人。』とか、

70年前の人間なのに

なんなら戦国時代の侍という設定なのに

そのへんにいそうで、もしいたら勝四郎のように

きっと好きになってしまうと思う

勝四郎に正面から尊敬の言葉を食らったときの

ちょっとした表情とか

とにかく宮口精二さんの演技があまりにも圧巻

 

この映画が日本を代表しているのには理由がある

僕の20代の船着き場には

ウルトラセブンだったり手塚治虫だったり

他の港にはない船が停まっている

僕はかけがえのない生涯で黒澤明に出会えたこと

を本当に幸せに思う

簡単に出会えるようで、意外とそうでもないのだ

黒澤明の遺したものが僕を水平線の向こう側に連

れていってくれるような予感がした

気持ちが昂った