2023-07-04

3限で歌舞伎の授業を受けながら、自分が昨日ぬ

けぬけと同級生に語ったアニミズムについて、

すべて妄言だったらどうしようとか思いながらい

ろいろ考えている。

義経千本桜に出てくる佐藤忠信は"義経"を"キツ

ネ"と読んで、そのままキツネの化けた姿として...

と先生が説明している。

そういえば昔の日本人は晴れた日に雨が降ってく

ることを"狐の嫁入り"と喩えた。

海外のfoxは嫁入りするだろうか。

諺にもまたアニミズムの香りが漂っている。

 

昨日のプレゼンはどれほど相手に伝わっただろう

か。エノケンのプレゼンじゃなかったらもっと明

るくさっぱりと発表していたと思う。

ただ、人間性を尊重するために、そのときの教室

で一番輝かないことが僕にできることだった。

もし完璧に映ってしまったら僕はカリスマになっ

てしまう。だけどそれでは体を張ったことになら

ない。滑稽になれない。夢を見て貰えない。

逸脱することに怖さもあった。

ただ、エノケン志村けんもその怖さと戦ってき

た。喜劇人の笑いはちっちゃいところから生まれ

るものだと思う。竜ちゃんも小さくなろうとしす

ぎて消えてなくなっちゃったけど、がんばった。

僕は果たして小さくなれていただろうか。

プレゼンから映像資料への切り替えでモタモタ。

優しい女性の先生が助けに来る。

進まないプレゼン、焦る僕。

気がつけばほぼ全員がスマホを見ている。

僕はあの教室の空間そのもので現代における滑稽

の立ち位置を表現したかった。

演じたのではなく、生きようとした。

その結果、伝わる喜びと、伝わらない怒りと、伝

えられない悲しみと、伝えられる楽しみ。

エノケンのおかげで僕は喜怒哀楽をあのプレゼン

にすべて入れることが出来たと思う。

エノケンと出会って、僕の中でのものさしが完成

してしまった。アイデンティティが固まった。

その証拠として、プレゼンの後にアイデンティテ

ィに彷徨う同級生には焦りと妬みの混じった浅い

匂いのする会話をぶつけられるようになった。

僕の人間性は、誰かの目には弱く、誰かの目には

強く映っていただろうか。

"継承"のカギは言葉じゃなくて人間性にある。

 

面白いことに、僕は今4限の特別講義で、同じ学

年の行動的な女の子のプレゼンを聞いている。

声はハキハキ、幼少期の写真、個人ワーク。

ボランティア、学生団体、留学、ビジネスetc...

いかにもな単語の数々に、すっかり忘れてきって

いた"プレゼン"のステレオタイプを思い出した。

思考タイプで言ったら"経営"は僕と真逆のそれで

はないだろうか。

彼女は人を惹きつけるために目に見える目標とか

経験とかを引き合いに出している。

ただ、僕はそういった綺麗事に一切興味が湧かな

いらしく、その子のその目標や経験への思考と

か、段取りでもたついたとことか、思想のかたま

りである内藤先生の思想マシマシのインタビュー

になんとか綺麗事で返そうとしてがんばっている

姿の方が僕の目には面白く映っている。

意識高い系じゃないって言ってたけどどう考えて

もその人種である事実の方が面白く映っている。

自分がやり切ったあとに全く違う"やり切り"をみ

るという体験は非常にエモい。

自分が昨日やったのは向こうからしたらプレゼン

だと思われてなかったのではないだろうか。

その怖さはすごくある。

ただ、昨日のプレゼンなのかも分からない何か

に、僕は"継承"のというものをなるべく言葉では

ないもので伝えたつもりだ。

トトロを見るときの自分の感性を伝えるときに、

僕はあえて映像を用いて説明しなかった。

感性の押し売りには夢がない。

その人がトトロを見るときに、僕が見せた夢を信

じることで、今まで見えなかったものが見えたの

だとしたら本望。

 

キャンパスを出るともう夏だ。綺麗な夕焼け。

歩きスマホでこの文章を書いていると、急に画面

が少しだけ濡れた。

東京の街中で狐の嫁入りだ。