地元・白河のブックオフで立ち読み
『アクタージュ』なる漫画を読む
週刊少年ジャンプで3年前まで連載されていたこ
の漫画、なんと原作者が逮捕されて打ち切りにな
ってしまっているのである...
ただ内容はすごく面白い、なんならお蔵入りにな
ったからこそインパクトのある作品なのかも
高校生にして両親がいない夜凪景は双子の弟と妹を養育しながら女優を志す夢追い人。ある日オーディションを受けたが、彼女のポテンシャルは群を抜いて素晴らしく、審査員の度肝を抜いた...のだが結果は落選。その理由は彼女のとある特殊な演技法にあったー。
というあらすじ
特筆すべきは俳優の最終奥義・メソッド演技がこ
の作品の主人公の天性の才能として描かれている
ところ
ロバート・デ・ニーロやレオナルド・ディカプリ
オが実践しているこの演技法は、簡潔に言うと自
身の過去の記憶をキャラクターに重ねて演技する
やり方
それだけに感情表現の説得力が段違いなのだけど
そのかわりトラウマを呼び覚ましてしまうことや
虚実の境目が曖昧になる点からして俳優の心を侵
食する危険な演技法らしい
実際にヒース・レジャーは『ダーク・ナイト』で
この演技法を実践し、あまりに役作りを徹底しす
ぎて公開前に死んでしまった
そんなメソッド演技を無自覚にこなせる夜凪が
やがて出会うのは自己客観視を完璧にこなし、
齢16にして自分をプロデュースする百城千世子
この2人の熾烈な関係を軸に、夜凪のメソッド演
技に魅せられた同年代の俳優の卵の視点も絡ませ
ながら序盤のストーリーが展開されていく
その舞台が恐らく深作欣二の『バトル・ロワイヤ
ル』を模した撮影ロケになっているのが非常に面
白い
去年養成所に行ってみて気づいたんだけど、俳優
の卵って意外とメタ認知が出来ていない、率直に
言うと器用貧乏が多いのが印象的だった
当然メソッド演技なんてできないわけなのだが
この漫画の言ってることはそのへんの俳優論より
よほど的をいていて、もしこれが今の推しの子く
らい流行ってしまったら現在の俳優業界の生態系
が崩れるんじゃないかとすら思った
それだけに、この漫画が打ち切られるという運命
は不可抗力として確定していて、原作者の愚行は
そこに向けた収束力だったように思える
